現局面と未来図

1級への技法

たとえば、序盤早々で角換わりが行われた将棋では、互いに角の打ち込みを警戒した駒組みがなされます。陣形が進んで整ってゆけば、その局面をどんなに眺めても、角を打つことは難しい。

けれど、歩が一枚進んだり、銀の位置が変わったりすれば、角を打ち込む隙ができる場合がある。今の局面では打開できないけれど、ほんの少しでも駒の配置が変わった局面になれば、攻め筋が出てきます。あるいは、角を打ち込む隙を作ろうという発想をすることが大事だとも言えます。その目的に向かって、どの駒をどう動かすかを読んでゆきます。

中盤以降でも同様だと思います。相手は簡単に崩されないよう陣形を組んでくるのが普通です。どこからどう攻めたらよいのかよく分からないのが現局面。でも逆に言えば、相手は駒を1つも動かせない状況だとも言えます。完璧な防御ですが、絶妙のバランスの上にぎりぎり成り立っている。だから、ほんの少しだけでいい、相手の陣形が乱れた状況を想像すればいい。

そういう未来の局面を思い描けるかどうかが、将棋に強くなるためのコツなのかなと最近思うようになりました。この思考方法は、現在の局面から一手ずつ先を読んでゆくのとは少し違うような気がしています。先に未来の戦況が見えて、そこから逆算して駒を進めてゆくような気がしています。

これは人間とAIの差かもしれないなとも思います。AIはきっと、現局面からありとあらゆる先の局面を読んでいって、形勢が一番良くなる手を打つ。先に一番良い未来が見えているわけではない。人間は、直観によって先に結果図を想像することができる。そして、それに向かって進むことができる。

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