将棋で守りの手の用語を、ここで一度整理してみようと思います。似たような言葉づかいですが、微妙にニュアンスがちがっていて、受ける時はその微妙な加減が危険度に直結するな気がしたからです。
「離れる」は、戦場になりそうな所、相手が駒をぶつけてきそうな所から、駒を遠ざけること。序盤で玉を安全な方面へ移動させるのが典型的です。玉であれ他の駒であれ、戦いが始まる前に安全なところ、連結が取れるところに、予め移動させておくのは、中盤以降、数手得することにつながります。
「防ぐ」は、相手の攻めが成立しないように、事前に手を打つこと。たとえば、飛車先の歩交換をされないように銀を上がっておくとか、角交換をされないように歩で防いでおくとかです。序盤では特に、相手の銀の進出自体を防ぐのが大事。本格的な攻撃を受けきる手数や危険性よりも、未然に防ぐ方がはるかに安全で手間がかかりません。
「受ける」は、相手が駒を進出させたりぶつけてきたときに、それに対応するような手を打つこと。たとえば、相手が歩をこちらの歩にぶつけて来た時に、相手の歩を取ったり、あるいは、こちらの歩がタダで取られないよう紐付けたりすることです。「受け」という言葉は広い意味で、守りの手全般を指すこともあります。
「避ける」は、相手が駒をぶつけてきた時に、それから逃げることです。すでに相手の攻めが始まっていると言えるので、避けただけでは局面が好転しないこともしばしばです。また、歩や桂馬、香車は避けること自体が難しいケースも多いです。
「躱す」は、避けるとも似ていますが、駒を前進させて攻めや牽制に使うこと。たとえば、銀と銀がぶつかり合った時に、素直に相手の銀を取るのも手ですが、相手の銀の脇腹に移動させて他の使い道を探るのも手です。
最後に「手抜く」です。受けている時点で、後手を引いている、相手に攻めのターンを預けたままとも言えます。そこで、相手の攻めを無視する、つまり、手抜くこともできます。手抜けば、自分の好きな手を打てます。その方が結果として、相手の攻めが遅れたり止まったりする場合もあります。もちろん、受けなかったばかりに、将来の禍根を生み出してしまうかもしれません。手抜くためには、正確な先読み、速度計算が必要です。