Sugar『一撃! 対振り飛車へなちょこ急戦』

1級への技法

2024年7月に読んだ将棋の本は、Sugar『一撃! 対振り飛車へなちょこ急戦』(マイナビ出版、2024年)です。

私は居飛車で戦いますが、2か月ほど前まで、対振り飛車が苦手でした。

ある時、ネットでアマ高段者同士の戦いを観戦していた際、居飛車側が舟囲いのまま、4五歩と突き出し、そして3三に待機していた桂馬が跳ねました。そんな弱い囲いのまま、開戦してしまって、しかも桂馬まで跳び出して大丈夫かなと思った数手後、振り飛車側の角や銀を蹴散らしてゆき、あれよあれよと飛車先を突破。竜が暴れまわって、勝勢になってゆきました。

その戦い方を私も真似てみたところ、対抗型の成績が上向きました。そして後日、どうやらこの仕掛け方は「へなちょこ急戦」とも呼ぶらしいと知ったのです。あるいは、私が参考にしたアマ高段者さんもまた、へなちょこ急戦から学んでいたのかもしれません。そういう訳で本書を手に取りました。

へなちょこ急戦(略称・へな急)は、4五歩早仕掛け戦法の一種に区分されるのだと思います。そして、大きな駒損をすることなく、飛車の成り込みを狙える戦法です。帯にある通り、へな急は、シンプルだけれど、破壊力抜群の仕掛けだと思います。またもし、仕掛けが上手く行きそうになかったら、取り止めて、別の戦い方(地下鉄飛車、端攻め、持久戦等)に切り替えることもできます。

本書は、とりわけアマチュアに向けて、親切に書かれている、というのが読み始めた直後から抱いた感想です。仕掛け方と相手の応手は、よくある3パターン前後に留め、局面図と文章の配置も分かりやすい。大事なところでは手の意図を言葉できちんと説明し、各章毎にまとめがあったりもします。へな急自体の戦法の魅力もさることながら、棋書としての構成が素晴らしい。振り飛車に悩んでいる居飛車党には、強く推奨したい内容でした。

追記

本書を参考にして振り飛車と戦ったところ、勝率がぐんと上がりました。以前は勝率1割程度だったところ、このところ4割程度まで上がりました。ただ、桂馬の高跳びや歩の突き捨てがあるので、勝ち切るまでが用意ではありません。相手に5筋や4筋でと金を作られやすい印象もあります。こちらが竜を作れても、終盤までお互いに切り合うことも多い気がしています。著者も書いていますが、へな急は急戦調・力戦調ですから一手一手に非常に重みがあり、差しこなすにはそれなりの棋力が必要なのだなと思います。著者に感謝しつつ、さらに精進したいと思います。

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