2024年11月に読んでいる将棋の本は、折田翔吾『鬼の終盤力 ~AIから学ぶ寄せと凌ぎの技術~』(マイナビ出版、2024年)です。
棋書のタイトルに、「鬼」と「AI」が入っていると気になって仕方ありません。本書もそんな一冊です。しかも終盤とは、私が今まさに鍛えたい局面です。
本書は、AI同士の対局の中から、これぞ絶妙手と言われるものを集めています。終盤における次の一手の問題集といったところです。寄せ41問・凌ぎ34問・攻防25問の計100問です。
見開き2ページの中に問題と解答が載っていますので、読みやすいのですが、わりとあっさりした解説です。AIの指した手(最善手)と、それより劣る手(次善手)が挙げられています。符号ベースなので、言葉で将棋AIの考え方をまとめているわけではありません。将棋AIと人間の指し手の違いはなにか。私としてはそこをズバッと指摘してほしかったのですが、本書の中では言葉では触れられていません。そこが、ちょっと残念です。あるいは、人間もAIも違いは無いのかもしれません。指し手には単に、有効な手かどうかがあるだけ。
なので、きちんと棋譜並べする中で、自分で将棋AIの技術を感じ取り、読み取らないといけないと思います。級位者の私には難しいかなとも感じますが、最善手と次善手それぞれの意味を時間をかけて考えつつ読んでいます。一人感想戦のような読み方になりますので、少し危険かなとも思いますが、高段者の人たちはこういう勉強法なのかもしれません。言語として簡単にまとめきれない感覚、それは数多くの優れた実戦の中からつかみ取るしかない。
将棋AIのロジックは、今では人間が書いていない、もうブラックボックスだと聞きます。AI同士が日夜ずっと戦い、鍛えあっている。本書に載っている鬼手は、どんな判断基準から導かれたものでしょうか。単に、あらゆる読み筋を考える中で、評価値が最大の手だ、というだけかもしれません。けれどそもそも、その評価値はどのように判断されたのでしょうか。本書を通じて、その判断技術の一端でも覗き見たいなと思っています。
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