町道場で、駒落ちの上手を持たせていただきました。私のような実力の者では通常、上手を持つことはありませんが、集まった対局者の都合上、たまたまそうなりました。相手の方は8級で、二枚落ちでの対戦となりました。
対局してみてまず思ったことは、これまで駒落ちで数十回ご指導いただきましたが、上手がどんな手を打ってきたのか、ほとんど覚えていないことでした。とりあえず金銀を上がって、玉を避けて、そこから先はどうしていたっけな、といった感じです。桂馬は跳ねていただろうか、端歩は受けていただろうか、細かな所がどうにもさっぱり思い出せません。駒落ち指導で、自分の指し手ばかりを見ていて、相手の指し手をよく見ていなかった証拠とも言えます。
そして、次に思ったことは、どう攻めたらよいか、まったく分からない。飛車も角行もなく、銀を繰り出していっても餌食にされるだけに思える。桂馬を加えても物足りない。かといって、さらに金まで繰り出していっては自玉が薄くなるばかり。愕然としました。こんなに打つ手が無いものなのかと。それでも、私が対戦して来た上手は、なんとか攻め口を見つけてきたはず。はて、困った、どうしたものか。それでふと思い出したのは、そういえば、歩を捨ててきていたな。それで垂れ歩をされて、けっこう困ったことになったんだっけな、ということです。それで私もさっそく真似て、歩突きで、戦端を開く。垂れ歩をできる準備をする。いずれ、と金を作って相手玉に迫るぞ、と顔に出さずに思っておく。
そして、下手の狙いは、一直線。どこを狙っていて、どんな局面に持ち込みたいのか分かりやすい。だから対策も立てやすい。こちらが金銀をしっかり構えていれば、そうそう簡単には破られない。
そこから数手進んでゆくと、下手がふいに変な手を指してくる。明らかにやばいじゃん、その手。悪手じゃないのそれ。もしかしたら罠かなと思いつつ、恐る恐るも、すんなり駒得。そこで下手の方がようやく悪手だったと気づく。ああ、そうか、上手は無難な手を指していけばいい、下手が勝手に良くない手をそのうちに指してくる。そこを突けばいい。相手のミスを待つというのが、上手の基本的な作戦でいい。そういえば私も、自分から上手く動いたつもりでも、結果的にこけてしまい、上手を利するだけというのは数知れず。上手と下手の差というのは、もしかしたら、良い手を指す割合が多いか少ないかではなく、悪い手を指してしまう割合が少ないか多いかではないか、と思ったりもしました。
そうはいっても、こちらも級位者。最後の最後で拙いミスをして、その対局は負けてしまったのでした。駒落ちの上手を持ってもまだまだ修行。たいへん勉強になりました。