2025年6月に読んでいる将棋の本は、先崎学『ホントに勝てる穴熊』(河出書房新社 、2003年)です。
最近、対振り飛車戦では、できるだけ居飛車穴熊に構えるようにしています。穴熊に慣れていない私でも、舟囲いや銀冠に比べて、そこそこ良い勝負になるからです。
とはいえ、穴熊になると、右辺は破られやすいし、攻め駒も少ない。勝ちやすいはずの穴熊でも、まだまだ五分五分以下の勝率です。穴熊を使いこなすには独特の感覚が必要だと聞いたことがありますが、私にはまだよく分かりません。そこで穴熊についてしっかり学んでみようと思い、本書を手に取りました。先崎先生は、他にも棋書やエッセイを著されていて、いくつか拝見しています。歯に衣を着せず、独特の視点から語られる将棋観は、学びも多く楽しい。
さて、本書のまえがきに「プロなら「こんなもの終わっとる」と言って目もくれないであろう局面から分かりやすく解説」とありますが、先崎先生、まさに初段以下の人たちは、そこを是非教えてくださいなんです。勝負がついていそうでも、そこから勝ちきるのもたいへんなんです。
穴熊流の勝ち方とは何なのか。堅陣があるとはいえ、中終盤をどうやって戦ったらよいか。堅く遠い囲いとは言え、絶対に気を付けなければならない事は何なのか。それらを独特の先崎調でずばっと語ってくれています。
第1講(第1章)からでも、はっとさせられた文言がたくさんありました。
「玉の反対側で互角のさばき合いになれば、居飛車が優勢になる」(10頁)
「穴熊に囲うだけでなく、穴熊に囲ったあとの戦い方をマスターする必要がある」(11頁)
「じっくりと金を作りにいく。これが穴熊を指しこなすポイント」(22頁)
「とにかく穴熊の堅さを信じて疑わないこと。これが穴熊を指すうえで大事な心構えとなる」(26頁)
「極端にいえば、飛車角より金が重要になるばあいもすくなくありません」(28頁)
「と金の作り合いは、穴熊の利点が最大限に生きる」(36頁)
「桂頭の7四の地点を攻めることができれば、成功したと考えてよい」(52頁)
「後手を引きながら一方的に飛車を攻められないことと、敵陣に成駒(特にと金)を残すこと。この二点を守っていれば、想像以上に居飛車側の勝率は高いものです。」(55頁)