2024年3月に読んでいる将棋本は、斎藤慎太郎『常識破りの新戦法 矢倉左美濃急戦 基本編』(マイナビ出版、2017年)です。昨年冬から少しずつ読み進めています。読んでは実践で試し、また読み直しをしています。
私は居飛車で、相手の振り飛車に苦手意識がありました。その対策として、囲いの左美濃を身につけようとしたところ、本書に出会いました。
本書には続編・姉妹編『規格外の新戦法 矢倉左美濃急戦 最新編』もあります。間違えて最初にこちらを購入してしまい、とても難解だなと思って、基本編を購入しました。ところが、その基本編も最初は混乱しました。
帯のキャッチコピィに「単純明快にして、超ド級の破壊力! これが新型矢倉の全貌だ!!」と書いてあります。また、図解も先後反転していなかったので、先手矢倉の方を持って読み始めてみたところ、劣勢になるばかり。実は、本書は、先手矢倉に対して、後手の左美濃がどう急戦を仕掛けてゆくか、という内容になっていたのでした。私の認識では、矢倉と左美濃はまったく別物なので、キャッチコピィがちょっとずれていますよ、出版社さん、と言いたくなりました。
改めて、後手の左美濃の視点から読んでみると、たしかにキャッチコピィにあるとおり。怒涛のごとく相手矢倉へ襲い掛かり、寄せまで持ってゆく力強さがあります。飛角銀桂が連動する将棋の理想的な攻めです。仕掛け方とその戦果には、鬼殺しやトマホークのような雰囲気も感じました。
私は受け将棋の棋風が強かったのですが、ちょうど、攻めの棋風も強化したいと考え出していた頃に本書を読み、一気に攻め将棋の魅力に目覚めました。左美濃という囲いを学ぶつもりだったのが、真逆の本格的な激しい急戦方法に出会ってしまったのでした。さっそく実践で試してみたところ、本書の通りに上手くゆく場合もあり、驚きました。ただ5回に1回くらいの割合です。残り4回は上手く仕掛けが発動できず、それらは続編で取り上げられているのでした。
本書は、この急戦が上手く進行するケースを多く記載してあり、基本編にふさわしい内容です。「これも一局」「形勢互角」のような結果ではなく、成功例が満載。私のような攻めの初心者には分かりやすかったです。定跡書は難しいと思っていたけれど楽しいと思えるようにもなりました。