飛車を振ってみた、其の二

8級への技法

私は居飛車で戦いますが、振り飛車側の視点や気持ちが知りたくて、また飛車を振ってみました。

半年程前に初めて振ってみた時の第一印象は、序盤は盤面左側がとても窮屈だ、でした。駒組みや攻撃を進めて、攻め駒たちを早く捌いてしまいたい、と思いました。

今回気づいたのは、以下の3点です。

第一に、美濃囲いに構えたのですが、それがとにかく固い。攻めに専念できるという印象です。自分が居飛車で、振り飛車と戦う際には、高美濃や銀冠に組んでくれた方が戦いやすいと思っていましたので、あえてずっと美濃囲い。5筋から2筋までの歩は1マスも進めません。低い陣形のままなので、相手の攻撃はぜんぜん取っ掛かりを持ちません。相手がぐいぐい歩を伸ばすにしても手数がかかる。その間に振り飛車側は、いろいろな手を打つこともできるという算段です。

とはいえ第二に、振り飛車側も歩を伸ばしてゆけないとなると、攻撃の場所やバリエーションが限られます。自分から攻めの糸口を作ってゆくことが難しく、相手から仕掛けて来てくれないかなを待つ中盤となりました。こういう状況で自分から仕掛けてゆくと、無理攻めになることが多かったです。カウンター待ちを狙うと腹をくくるしかありません。いよいよそれにも耐えられなくなると、歩を前進させてゆきますが、そうなると、鉄壁に思えた美濃囲いを、高美濃や銀冠に変形させねばなりません。私にとっては、囲いの進展や発展というより、次善策に思えます。しかも、中盤なのだから、守りに手数をかけたくないのに、費やさねばならないもどかしさを感じました。私が居飛車で戦う際、振り飛車側は囲いを美濃囲いから徐々に変えてくるなと思っていましたが、防御と攻撃とのバランス、今後の局面を考えての判断だったのだと合点が行きました。

第三に、居飛車側からの棒銀がとにかく怖い。振り飛車の初心者なので、その受け方を知らないというのが大きいですが、棒銀の構えを見せられただけで、角をどこに避難させよう、桂馬が跳ねれば受けに役立つのか、向い飛車なら何とかなるのか等、オロオロとしてしまいます。かといって、せっかく固い美濃囲いを組めるのが振り飛車なのに、金を盤面左に持ってゆきたくはない。それで一時、棒銀を防げたとしても、玉周りの防御力が格段に落ちてしまいます。それに、居飛車側が、飛車筋を変えてくれば、金が一枚遊んでしまうことになりかねません。この辺りは、振り飛車側の独特の駆け引き、序盤術、駒の捌きが必要なのかもしれません。振り飛車素人の私にはまったく分からない感覚です。

第四に、振り飛車の左桂馬は、跳ねにくい。振り飛車は左桂馬を活用できるかどうかが勝負のポイントだと聞きますが、振り飛車で戦ってみて納得です。序盤は角が居るので、跳ねられない。中盤になったとしても、桂頭を守ってくれる駒がいない。銀が出払っていることも多い。跳ねるとなったら、もう後には引けない。いざ跳ねてしまったら、相手の桂馬と交換になってくれれば御の字。それもできないと、角交換された際に、相手の角を取り返すだけの存在という印象でした。

今回の経験を、居飛車側として役立てるとすると、次のようになるでしょうか。

(1)居飛車側は、序盤で棒銀を匂わせ、振り飛車側に陣形を固くするか、広く守るかをたずねる。

(2)もし振り飛車側が広く守る気ならば、居飛車側は玉を固くする。いわゆる持久戦に持ち込む。態勢が整ったら、飛角銀桂をどんどん捌いてゆき、玉の堅さで上回って勝利を目指す。

(3)もし振り飛車側が固く守る気ならば、急戦調で仕掛けてみる。その際に、美濃囲いは手強いので、囲いの変形に着手し始めた時が仕掛けのチャンス。振り飛車側からは攻めにくく、その囲いも中途半端。その瞬間までは、居飛車側も仕掛けの成否やタイミングは冷静に見極める。振り飛車側は、攻めが遅いのではなく、カウンターを狙っている可能性も高いため。

振り飛車に転向する気はまったくありませんが、今後も時々、飛車を振ってみたいなと思います。

【関連】

飛車を振ってみた、其の三

飛車を振ってみた

タイトルとURLをコピーしました