終盤戦の入り口の棋譜解析をしていた際に、将棋AIが、飛車や角で、相手玉に王手を掛けられるなら掛けろ、と示すことに度々出くわします。
私には、王手をかけたってすぐに防がれたりするだけなので、一手無駄じゃないか、と見えます。ただ、その後の順を追ってみると、相手は持ち駒を使わざるを得ないことが少なくありません。
そう、王手を掛けるのは、相手に持ち駒を使わせるのが、将棋AIの主眼だったのです。それによって、相手からの攻めが薄くなる。受けに適さない駒ならば尚よい。相手が攻めに使うはずだった、角や桂香を使わせることになれば、相手からの攻めは取っ掛かりを無くす。もし底歩を打たれたとしても、その筋では、と金を作られる心配をしなくてもよくなる。一気に寄せや詰めが無いならば、こちらは攻めの姿勢を見せつつ、相手には受けに回ってもらう。そのための飛車や角による王手だったのです。
飛車や角であれば機動力に優れるので、王手を掛けた後も、簡単に囚われたりすることはない。金や銀だと、打ち付けた場所から動きにくい。桂馬や香車であれば尚更。飛車や角ならば、王手を掛けても大きく損することは少ない。そういった戦術眼のようです。
人間的な観点からすれば、どう王手を防ぐか、どの駒を使うか、王手をかけられた方は、数秒か数十秒か使うことになります。時間的にも相手にゆとりを与えない側面があると思います。
終盤の勝負術の基本の1つだと思いますが、そんな駆け引きがあるなんて、と発見する日々。自分の終盤力がまだまだだなと実感しています。