角で王手をかける意味

2級への技法

ある対局の棋譜解析をしている時、AIが、角で相手玉に王手をかけろ、と示します。

その時、私は別の手を指したのですが、次の手の時にも再び、角で王手をかけろ、とAIは示します。

その次の手番でも同様でした。角で王手をかけろ。

私は、王手をかけたところで、すぐに王手は防がれてしまうから意味がない。だから王手をしない、という選択をしました。相手が、角道に歩を置いたり、相手玉が逃げたりすれば、詰みがあるわけではない状況になる。こちらが王手をかけた分だけ、手数が無駄になるからです。

ところが、AIは盛んに、角で王手をかけろ、と解析してきます。

将棋AIが示す以上、その手は、最善手である可能性が高い。いったん何なんだろうと、よく分かりませんでした。

それからしばらく経って、私なりにAIの意図を考えてみました。

まず、角で王手をかけて、相手玉がその位置から逃げた場合。これはこれで、相手玉が本来位置していたかったマスからずれることになる。玉と金銀の連結が薄れたり、端に追い込んで端攻めが届きやすくしたりする等、後々の攻撃を響きやすくする下地を作る。

もうひとつ、相手が角道に何か駒を置いて防いだ場合。その駒は、基本的にもう動くことはできない。目の間に歩が来ようが、桂馬で狙われようが、逃げられない。逃げれば、角の効きによって、玉が詰ませられてしまうからです。そう、角で王手をかけてロックオン状態になったのは、相手玉だけではなく、それを守る別の駒も同様なのです。

角で王手をかける意味は、それ自体で相手玉を詰ますことには無く、それ以降の戦いをこちらの角行が主導権を握ったものにするためだったのです。

そんなチャンスを私は見逃していたのでした。その後の対局で、角で王手を掛けられれば掛けようと狙っていましたが、案外そんなチャンスは無いものでした。

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