羽生善治『上達するヒント』

3級への技法

2023年9月に読んでいる将棋本は、羽生善治『上達するヒント』(浅川書房、2005年)です。

本書は、手筋というよりは、将棋全体の考え方を解説してくれています。具体例がアマチュアの対戦棋譜です。プロ同士の棋譜では、お互いに隙が見えない高度な局面が多いですが、本書の具体例は、一見して私でも分かるほどの棋譜の粗さがあったりして、そこがまた面白いです。

実は、本書を先月に1回読了していますが、2回目の読み直し中です。

この本は、不思議な魅力をもっています。

伝えたい事が、すっすっすっと頭に入ってくるようで、他の棋書には書いていない、ものすごく大事な事が書いてあるような気がする。でも、とても分かりやすい言葉、親しみやすい表現なので、その凄みが表には現れていない。

初級者の私には、事の大事さが沁みては来るけれど、完全には理解しきれていない。きっと、読む方の力量に合わせて、その時に分かることだけ分かる。実力が付けば、もっと深く将棋を理解できる。

そんな棋書なのだと思います。

本書は、海外の将棋ファンに向けて書かれたものに加筆修正して生まれたそうです。素直に分かりやすいけれど、奥が深く感じるのは、それが所以かもしれません。

章立ては下記の通り。

第1章 基本方針と形勢判断──四つの判断基準
第2章 構想について──その方向性は正しいか
第3章 歩の下に駒を進める──駒の力を引き出すには
第4章 駒がぶつかったとき──損得のバランスを考える
第5章 位取りについて──五段目の歩の大きな力
第6章 主戦場について──戦う場所の選択
第7章 玉の安全度について──囲いの強さ、囲うタイミング
第8章 さばきについて──量より質のテクニック
第9章 厚みについて──戦わずして勝つ方法
第10章 スピードについて──将棋の質が変わる
第11章 攻めの継続──指し切りの局面を作らない
第12章 進展性について──自分の進展性と相手の進展性
第13章 陣形について──必ず崩されるという覚悟

章立ては、ある程度、序盤・中盤・終盤という流れになっていますが、タイトル=着眼点の時点で、他の棋書とはどことなく違う感がもう既にある。さすが羽生先生。

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