将棋初心者の私が、一通りの駒の動きと簡単な手筋を覚えたあと、次に困ったことは「どうやって攻めたらよいか」です。
馬鹿々々しいほど素朴な疑問ですが、それが最初、まったく分かりませんでした。
駒組を進めれば、いずれ駒と駒がぶつかり合う瞬間がおとずれます。でも、自分から先に駒をぶつければ、自分の駒をとられて、はい、おしまい。
だから仕方なく、自分から攻めることはせず、相手の攻撃を待ち、それを受ける。おかげで、どう受けたらよいかは鍛えられましたが、やはり守りだけでは一向に勝てません。
本当に本当に、どう将棋を指したらよいのか、次に何をしたらよいのか、初心者の私には分からなかったのです。
負け続けたある日、どう攻めたらよいか、大まかな方針が急に分かりました。それは次の3つでした。
- 相手玉を直接狙う
- 龍を作る
- 相手の飛車を奪う
相手玉を直接狙う
将棋なので、相手玉を攻めるのは当たり前。その当たり前の姿勢を見せることが、攻めの基本であり、究極の目標達成にもつながります。
そのことにはたと気づいた時は、雲がはれた気がしました。
攻めるという姿勢がなかった私は、相手からすれば、単なる獲物です。こちらに攻めてくる気配がないならば、相手は守りを手薄にしても大丈夫。攻めに駒をどんどん投入することができ、こちらを押し切れます。
けれど、相手玉を狙う姿勢を見せれば、向うも守備にいくらか駒を備えるのが普通。そうすれば少なくとも均衡状態を保てます。
相手陣に迫るよう歩を進める、飛車を振って相手玉の前に居座る、角筋の先に相手玉を見据える、銀を繰り出していって相手玉に迫る。上手くすれば、駒の進み具合、変化の中で、なにか隙をうかがうことができるという局面が生まれてきました。
そして、攻めが直接、相手玉に向いているのがポイント。
王以外の駒は、最悪、相手に渡してしまっても将棋を続けられますが、王だけは別。絶対に取られてはならないので、相手の受け方、逃げ方に制限が出てきます。なので、相手玉を直接狙うことに、他の個所を攻めるのとはちがう、有利さが出てくる局面がありました。
龍を作る
将棋というゲームは、飛車が龍王に成る、で大勢が決まってしまうように思います。勝つ時も負ける時もほぼほぼ、どちらか片方は龍を作っている。
なので、自分が龍を作れれば、戦いを優位にコントロールできる、つまりそれを攻めの方針にすればよいのだと気づきました。
町道場の駒落ちの指導対局でも、とにかくまずは龍を作りなさい、と教わります。
一番有名と言ってもよい戦法「棒銀」も、龍を作るための手段と言えます。
多少の無理攻め、駒損であっても、龍さえ作ってしまえば、相手陣をかき乱し、駒の損を取り返して、攻めが続く。
もちろん、相手も簡単には龍を作らせてくれません。だから、悩みはつきないのですが、まずは龍を作るという意識をもつと、いくらかブレない将棋を指すことができるようになったと思います。
相手の飛車を奪う
3つ目の攻めの方針は、相手の飛車を奪う、です。
飛車を奪われれば、ほぼ負け。逆に相手飛車を奪えば、即投了してくる場合もあります。
相手の飛車を奪うことはもちろん、相手玉を詰ませる、龍を作る、と同じくらい難易度が高いです。
けれど、飛車が狙われていると警戒していない。飛車は強力な駒なので、その周りの防御は手薄。そういったことも少なくないように思います。
飛車は暴れまわってなんぼ。ですが、相手が何度も上下左右に動く中で、飛車が動けるマスを上手く制限できれば、狩れる場合もあります。
相手陣や相手玉に迫ると見せかけておいて、急に、相手飛車に攻撃目標を変える。手薄な飛車周りに、駒の枚数で上回って攻めれば、飛車も奪えなくはない。
飛車先の歩は、交換することが多いです。飛車がいつでもなり込めるぞという状態ですが、逆に言えば、飛車の盾となる駒がいない状況。そこに角銀桂と歩をからめて攻めたてると、意外に追い詰めやすい。
【関連】