2025年7月に読了した将棋の本は、井出隼平『四間飛車至上主義』(マイナビ出版、2023年)です。
音楽CDのジャケット買いならぬ、棋書の装丁買いをした一冊です。将棋本らしからぬ、青春小説を思わせるデザインに思わず目が行き、気になって本書を手にとり、概要を読みました。井手先生の実戦を題材にした四間飛車の解説書。四間飛車党ならば気になる局面やテーマを、とても平易で親しみやすい文体で語ってくれています。
私は基本、居飛車で戦いますが、なぜか振り飛車党(四間飛車党)の人は、とにかく穴熊を警戒している。振り飛車の美濃囲いと同等以上に、居飛車側で堅く組まれると、勝ちにくい。そう感じているように、本書の端々でも見受けられました。だから、相手に堅く組まれないように苦心する。急戦や持久戦を駆け引きしつつ、少しでもポイントを稼ぐことに腐心する。
振り飛車というと、さっさと美濃囲いに組んで、バシバシと駒を交換して(捌いて)、一手勝ちできればいいという怒涛の攻めを繰り出す。私の中でそういうイメージがありました。
ですが、本書を読むと、振り飛車党は、とても繊細。プロ同士の実践が題材ですから、当たり前と言えば当たり前ですが、乱暴な戦い方はありません。基本中の基本をきっちりおさえて、相手の方針と1つ1つの駒の配置に気を配って、守勢に入らないよう気を付けながら、どこからどう攻めたら効果的か吟味しながら指す。
本書の対象は、初段前後とあり、一通りの戦い方は分かっているけれど、さらに上を目指そう、精度を上げてゆこうという人にぴったりではないかと思います。単にこう指すべしという書き方ではなく、なぜなのか、なにがポイントなのかを言葉で本当に分かりやすく書いてあります。私が読んだ四間飛車本の中では、ベスト1に挙げたいくらいです。