将棋の序盤早々で、相手から仕掛けられると嫌な戦法が誰にでもあるものです。
私は初心者の頃、角換わりを避けていました。角を打ち込まれる隙に気をつかって、びくびく戦うことになるからです。かといって、角道を閉ざしたままというのも、棒銀の餌食になったりしていました。
鬼殺しにも、だいぶ苦しめられました。飛車を取られまいと過度に受けすぎると、かえって大崩壊していました。
横歩取りも嫌いです。一歩を掠め取るなんてセコい相手だなというのは単なる強がりで、その後も歩で守れない箇所に気をつかいながら戦うのは、窮屈でした。
筋違い角も同様です。相手の馬成りを防げば、一歩失うのは確実。代償にこちらは持ち駒に角を温存できるといっても、相手の角のいつもとちがう動き方によく振り回されました。
そんな序盤早々の奇襲的な戦法を、あまり気にしなくなったな、と最近ふと思いました。
それぞれ棋書やネットで対策を学んだことが大きいですが、あくまでも序盤の手筋に過ぎない。相手がわずかにポイントをあげるかもしれないけれど、それで決定的に悪くなるわけではない。
嫌だな、とか、恐いな、というのは自分自身だけの感情。盤上には置いてありません。相手の手を見た時、「ああ、その戦法で来たか」と感情を抜いて見つめるようにしました。
相手の狙いのうちには、きっと、こちらが負の感情を持つことも期待しているでしょう。心理面での駆け引き込みでの序盤戦法です。だから、マイナスの思いが入り込んだ視点で局面を見つめれば、それこそ相手の思う壺。いらいらしたり、そわそわしたりしながら、その後も対局に臨むのは、自分で自分を陥れているだけです。
相手は相手で、その出だしから展開できる戦い方というのも制限があるだろうな。自分は自分で相手玉にまっすぐ届く手を指したいな、と思うことがいくらかできるようになりました。