せめて手番は渡さない

初段への技法

飛車の前に、相手から香車を打たれました。もちろん、その香車は紐づけられています。あいにく持ち駒がなく、また、飛車の後ろに銀がいます。飛車を逃げれば、代わりに銀を香車で取られます。

飛車の方が銀より価値が高く、その銀は取られても大きな損害にはならないと判断して、私は飛車を避けました。

飛車はいったん助かりましたが、その後も追いかけられ、逃げ続けます。相手のいいように、飛車を隅に追いやられました。

その後、飛車は取られることもなく、活躍することもなく、終局を迎えます。私は飛車を逃げた後、一度も手番を得ることなく、負けました。

対局後、棋譜解析をしてみると、将棋AIは、飛車で香車を取るのが最善で、優勢になると示して来ました。

相手は飛車を取り返すが、そこで、こちらに手番が回ります。攻め続けて、十数手の後、先ほど得た香車を打ち付けて、それが決定打になります。香車が十分、飛車の代わりを成してくれたのです。飛車と香車の交換で、瞬間的・部分的には駒損でしたが、こちらは手番を得て、局面を優勢に導くことができたのでした。

私の悪手で失ったのは、駒の価値ではなく、手番だったのです。

持ち駒がたくさんあるのに、手番が来ない。持ち駒全部を相手にくれてもいいから、手番をくれ。そう思った対局も数多くあります。

「速度」という表現は、級位者には少し難しい。好きな攻めの手をさせる「手番」の方が分かりやすい。終盤は、駒の損得も大事だが、それと同等に、攻め続けられるかどうかも大事。多少の駒損をしても、せめて手番は渡さない。

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