私は3級くらいだった頃、地元の将棋大会に参加しました。その頃の私は、いくつか急戦の仕掛けを仕入れたばかりで、さっそく大会で試してみました。4局戦い、3敗しました。対戦相手が皆、80歳前後のお爺さんでした。私は初心者を脱し、将棋がますます楽しく、新しい手筋もどんどん仕入れていた時期だったので、将棋に年は関係ないと思いつつも、ずいぶんと悔しかった思い出があります。そして、お爺さんたちが口をそろえて「玉の堅い方が勝つ」という勝因を語っていました。お爺さんたちは、美濃囲いだったり矢倉だったり、しっかりと玉を囲い、陣形が整うまでは攻撃を開始しなかった。私の急戦を咎め、もっと玉を堅く囲え、というアドバイスでした。
心の中で私は、最近の将棋では、バランス陣形に構える方が評価されているよと思いつつ、そう構えて負けた自分を振り返って、黙って話を聞いていました。それからしばらくは意固地になって、バランス陣形に構えるのを良しとしていました。私の元々の性格上、あちらもこちらも不安だから、広く守ろうというのもありましたが、その時に負けて言われた悔しさもあったように今では思います。
最近の対局では、中終盤で互いに攻め合うことが本当に増えています。そして思い出すのが、お爺さんたちの格言、「玉の堅い方が勝つ」です。今とはなっては、うなずく面も多い。
どんなに巧みな攻めでも、攻めているうちに、相手に駒を渡すもの。攻め続けられればよいですが、少し緩い手を指して、攻守が入れ替わった途端に、玉の薄い方は防戦一方になる。もはや逆転の手を指す暇も無い。プロ棋士とちがって、最善手やそれに近い手を指せない確率の高いアマチュアでは、それは頻繁に起こること。
最後の最後まで良い勝負をするために、相手玉と同じくらいの堅さは無くてはならない。玉が堅ければ、相手は攻めあぐね、こちらは攻めに注力できる。仮に先に攻められ受けることになったとしても、玉が堅ければ攻守の入れ替わる余地は十分にある。
開戦前に、穴熊までゆかずとも、自玉は堅くできるだけ堅くする。そう心がけて最近すこし勝率が上がってきました。
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